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木陰の逢瀬

2008.07.28 *Mon
 

 風に歌う大樹の陰。ぼんやりと雲を眺めるエルに近付く姿がひとつ。
「ここにいたのか」
 掛けられた声は星司のものだった。相棒の声に、エルは重大な忘れ物を思い出した。
「あ、お弁当。ごめん、忘れてた…」
「たまにはいいさ、俺も休肝日…違う、休胃日?欲しいしな」
「酷いな…」
 ちらりと見上げるも悪態をつかぬエルに彼は眉根を寄せる。
「顔色悪いぞ、きちんと食べてるか」
「もう食べられなくなって吐くぐらいの勢いで食べてるよー」

 一応、嘘はついていない。

「へえ、黙示録のときにふらついてたのも気のせいか」
「そうそう」
 ──ごんっ。
 脳天に硬いものが当たった。星司の手にしていた紙袋の底だ。硬いけれど、重くはない。
「ちょっと、これ以上馬鹿になったらどうするのっ!?」
「限界まで来てるから大丈夫だと思うよ?」
 にっこりと人の好い笑顔を浮かべると、その紙袋をエルの膝に乗せた。
「弁当。最近顔色悪かったからな……っていうのは建前で、本当は見本」
「え、そこは逆に言わない?」
 大げさにショックを受けてみせたエルは胃の不調を隠すために「お弁当ないとお腹すくだろうし、自分で食べたら?」などと提案したが、見本だからと星司は首を横に振った。
 あまり強硬に拒絶しても疑われるだけ。そう思い、エルは弁当のふたを開けた。
「……見本なのに和食っぽいのは何でだろうね?」
「………」
 ふいっと視線を逸らせた星司の反応は本音と建前を如実に表していて、エルは嬉しそうに箸をつけた。
「和食はあたしの方が巧いと思うよ」
「他が致命的に悪いよりはマシだ」
 そうして軽快に食していたのだ…途中までは。
 固形物は早かったのだろうか、それとも予選の最中に感じていた極度の緊張が──勝手に倒れられたら困るという言葉の威力が大きかったのだろうか、箸が止まった。
「…本当のことを言えば残してもいいぞ?」
 面倒くさいと思いながらも栄養面にまで気を使った弁当。それは夏バテなどであれば、充分すぎるほど胃に優しい料理だったはずだから。
「嘘は言ってないよ。ほんの少ししか胃が受け付けないだけで。あと…夢見が悪くて夜中に目が覚めて…吐いたりとか……」
 それでも心配したティアたちにお粥を差し入れてもらって少しは食べたのだと主張する子分に、呆れとも怒りともつかぬため息をこぼした。
「あのなあ…体調悪いなら隠すな。泣きついかれたって俺は怒らない」
「…うん、解ってるけど…」
 心配かけたくないってのも解るけどな、と乱暴に頭を撫でて。
 無理ならそれ以上食べなくていいから、と律儀に全ての料理を一口ずつ食べた相棒に内心で苦笑しつつ弁当に蓋をし、少し休めと芝生を指差した。
「魘されたら起こしてやるから」
「……ありがと。起きたら、お弁当、もう少し食べたい…」
「わかったわかった」
 懸念したとおり、いやそれ以上に盛大に誤解の種をばら撒きそうな状況になったことは、もはや笑いしか生まない。
 それが廻り廻って状況を悪化させているのかもしれないが……とりあえず、少なくとも今のところは双方共にこの関係を崩すつもりはないようである。



***以下背後***
星司くんの日記『にちようび』を見てたら書きたくなりました。
勝手にリンクしてごめんね☆(←悪いと思ってないようだ)
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