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熱帯夜

2008.07.25 *Fri
 
 その夢を、もう何度見ただろう。
 その夢に、もう何度飛び起きただろう。

「──‥‥ッ!!!」

 深夜。飛び起きたあたしの身体は、脂汗に塗れ、熱帯夜だというのに冷え切っていた。
 現実を知らしめるように、ただ一点だけが、キリキリと痛む。

「‥‥‥っ」

 駆け込んだトイレで、胃の内容物を吐瀉して。
 ‥‥空っぽの胃袋から無理矢理搾り出される胃液が、苦しい。

「胃薬、あったかな‥‥」

 流しで口を漱ぎ、救急箱を漁ればそこには普段は縁も縁も無い胃薬の姿。
 水道管ごと温まってしまった温い水で流し込むと‥‥吐く物ができた胃袋が、痙攣した。
 再び空になった胃袋に拒絶されないものが思い付かず、仕方なく氷を含み、畳の上に寝転がった。
 こんな状態が何日続いているだろう。
 口にできたのは塩と蜂蜜とミルクが少し。落ち着いているときには豆腐で一品。
 それでも調子に乗ると身体が拒絶してしまう。

「今年の夏はバテそうだなぁ‥‥」

 ただでさえ魘されて睡眠不足なのに、これだけ食べなければバテるなって方が無理な相談なのはあたしにだって解る。
 でも受け付けないものは仕方ない。

「シュークリーム……美味しかったな…」

 脳裏に思い描くのはりっかと食べたシュークリーム、ここ数日で摂取した数少ない固形物。
 でも、思い出しただけで胃は嫌悪感を示した。あのときは美味しく、違和感なく食べられたのにな……。
 今とあの日と何が違うんだろう。
 喉を通った食事と通らなかった食事は、何が違ったんだろう。
 考えたら、ひとつだけ、直ぐに思い至った点があって───嘲りの笑みが零れる。

「そんなに一人が駄目なのか、あたしは」

 答えを得られないもどかしさ、逆に追い詰め傷つけていないかという不安、繰り返し訪れる渇望。
 ───に加え、楽しかった……楽しすぎた学園祭の反動と、充電機能でもある、スキンシップ欠如の自覚。
 たぶん、そんなのが一人になるたびに一気に吹き出すんだろう、普段から若干高めのテンションは限りなく低い。言うなればどん底。
 でも、こんな自分を誰にも見られずに済むのは……一人でいる、数少ない利点かもしれない。

「………っ」

 喉を潤した水分に拒絶反応を示した胃に手を添え、半分に溶けた氷を流しに棄てた。
 ぐっしょりと濡れた寝間着を着替えると、キリキリ痛みながらもムカつく器用な胃袋を抱き抱えるように、小さく小さく身体を丸めて、そっと目を閉じる。
 そして、息を潜めてただ時間が過ぎるのを……皆に会えるその時を、待った。

 ───我ながら、情けないな……

 漏らしたため息が、六畳間に響いた。
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