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2008.07.16 *Wed
 
 ※2008/07/16 15:30 加筆修正【長文注意】
 ※2008/07/17 13:55 修正、リンク追加その他
 

「ああ、気持ちよかった…!」
 風呂あがりの髪は水分を含んで重い。
 張り付く髪をタオルで包み、水を飲もうかとマグカップに手を伸ばした時。

 ───♪

 軽快な音が響いた。短い音が示すのはメールの着信だ。
「はいはい、なんですかーっと」
 上機嫌で開いた携帯の液晶は、差出人である『琥先輩』の名を表示していた。
『明日の本選も頑張ろうね。何か必要なものがあったら言ってね☆』
 そんなメールを送ったのは確かにエル。だが、返信があるとは思わなかったのだ。しかも、ひと風呂浴びる時間も経過している。
 今度こそ本当にメールも拒絶する内容ではないかと、息苦しいほどに緊張して本文に視線を落とした。
『遅くにすみません』
 そんな文章で始まる短いメールは、とある防具がないだろうかという内容の、必要に迫られたメールだった。
 返信までに要した時間は、送るか送るまいかと葛藤した時間なのだろう。
「よ、かった……。これ、返信していいんだよ、ね…」
『こんなのだったらあるけど…』
 高鳴る胸を押さえ、深呼吸をして、勤めて平静なメールを送る。

 ───♪

 軽快な音が響く。着信したばかりのメールを確認すると、淡々と記されたメールが返された。
 突然の言葉は、そんなやりとりを数回繰り返した後に飛び出した。
『今から受け取り行っても平気すか?』
「えっ?」
 夜も更けている。明朝こもれび荘に届けるか、それとも試合の直前に渡すかと考えていたエルは、もう一度メールを読み直した。けれど、当然ながら文面は変わらない。二人で会うことも、話すことも、頑として避けていた彼。その彼からの、公園まで受け取りにくるという思いもかけぬ一言。
「ああ、もう、汗流しておいて良かった…!!」
 まだ重く湿った髪のまま、引っ張り出した防具を畳み直し、紙袋にしまう。
 袋を乱暴に抱えると、愛用の自転車にまたがった。
 待ち合わせの公園に向かう足は、悔しいほどに軽い。
 夏間近の海辺の町は暗い夜でも人影がばらつく。街灯が多く、人通りがあり、かつ墓場の見えない道は遠回りだが、ペダルを漕ぐ足も力強く、到着までの時間は短かった。それでも、もう彼の姿はそこにあって──姿に気付いたのだろう、ぎこちなく片手を上げた。
「ごめんなさい、先輩。待った?」
「や、大丈夫す。俺こそこんな時間にスンマセン」
 本選進出が生んだ小さな会話が、たとえ事務的でも嬉しくて、自然と笑みを花咲かせながら紙袋を差し出した。
「じゃあ、コレ。さっき言ってた防具だよ」
「助かるっす」
 僅かに触れた指先。緊張と夜風で冷やされたエルの手とは違い、彼の手は熱い。
 それ以上には縮まらない互いの距離ではあるが、それでも触れる距離にいることが何だか嬉しい。
「……。それじゃ、コレ」
 触れた指に彼が何を思ったかは解らない。ただ、サッと脱いだハーフコートが差し出された。
「……!」
 確かに代わりの防具を受け取ることにはなっていたけれど、愛用の品とは思わず。
 ましてや、その場で脱いで渡されるなど、想像もしていなくて。
 まだ残る不意打ちの温もりに、動きが止まる。
「体調崩して負けるとか、つまんねぇすから」
 袖を通せとも受け取れる言葉にほんのりと頬に朱が差して、両の腕で力一杯ハーフコートを抱きしめた。袖を通そうとか広げたハーフコートに頬を緩め、消えゆく温もりに気付き慌てて袖を通した。
 袖もだいぶ余り、丈もエルにとってはハーフといえない長さで、しかも預かり物にすぎないが……それでも幸せそうに、目を細めた。
 そんな目まぐるしい反応からそっと視線を逸らして、彼は呟いた。
「明日も、その、よろしくで」
「…ん、頑張る…!」
 ふにゃりと緩んだ頬で笑みを向け、おやすみなさいと言葉を送り。
 緩みきった表情を隠すように急いで自転車に跨った。そして訪れた時と同様にとても軽やかに──他所の家の塀に突っ込んだ。よろよろと体制を立て直すと、今度はガードレールに前輪を擦りつけ。それでも緩んだままの頬はまるで酔っ払いだ。
「……降りてください」
 こんなことで怪我をされてもつまらない。明日の相手とは相性が悪いのだから、できるだけ万全の態勢を維持したくもあった。
 不機嫌な顔で自転車を止められきょとんと目を瞬いたエルだったが、その迫力に圧され大人しく従う。……と、不意にハンドルを奪われた。
「ホシジに電話して、迎え来てもらってください。怪我とか、くだらねぇ」
「へ?何で星司?」
 訊ねればますます機嫌の悪くなる表情。首を傾げながらも、リダイヤルから消えない名前を呼び出し、通話ボタンを押した。1回半のコール音の後、聞きなれた柔らかな声が耳に届いた。
『もしもし?』
「やほ、あたしだよー。今、暇?」
『まぁ、それなりにはね』
「じゃあ、北鎌倉の駅で待ってるっ」
 思い切り経過を省いたエルに返されたのは、呆れ果てた声。
『……なんだ、寝惚けてるのか。おやすみ』
「ちょ、違…! もう、先輩から何か言ってよー!!」
 茶化されながら事情を説明するには時間が惜しく、ぐいっと携帯を押し付けた。
 押し付けられた彼も困るだろうが、そこまで思考は回っていまい。
「……あー…」
『琥吉君ですか?』
 勘の鋭い星司である、予選突破の結果を思い出し、その関係で会ったのだろうと当たりをつける。
『一緒なら送っていけばいいのに』
「ンな義理もねー」
『僕にだってありませんよ。まあ、この間の電車みたいなことや…それこそ事故でもあったら寝覚め悪いでしょうけど』
 それは琥吉君も同じですよね。
 穏やかな微笑みが目に見えたのか、それとも図星を指されて苛立ったのか。反射的に彼は声を荒げていた。
「だー!!うだうだ言わずに来い!」
『ああ、残念。今から行くと終電がなくなるんですよ。エルのことよろしくお願いしますね』
 大きな声には全く動じず、それどころかそんな反応を楽しむように言い放つと、星司は一方的に電話を切った。
 わななく姿と駄々漏れの会話になんだか申し訳ない思いが膨らみ、サドルに手を掛けた。
「…あの、いいよ?子供じゃないし、独りで帰れるから」
「…送るっす」
 売り言葉に買い言葉。いや、ただの意地か。
 途切れぬよう、今日の戦法や明日の対戦相手を話題に持ち出した帰路は、ぎこちなくも穏やかで。自転車を飛ばした往路よりも時間は掛かったはずなのにとても短く感じられ、気付けばアパートに辿り着いてしまっていた。
 もう少し一緒にいたいけれど、時間は遅すぎる。名残惜しくはあるが、袖を通したハーフコートの存在が、自然な笑みを産んだ。
「帰り道楽しかったよ、話せて良かった♪気をつけて帰ってね」
「……」
 困ったような、苛立ったような。最近よく目にする表情を今日も浮かべて、視線をそらせつつ、軽く頷いた。
「遅いのに、どうもありがと。…おやすみなさい」
 後姿が見えなくなるまでたっぷりと見送って、ハーフコートをそっと抱きしめた。

 ──明日も、頑張ろう。

***関連日記***

星司の日記【秋の茶室】より、ある日の夜

***以下、背後***

 負けましたが、何か!!
試合前に食べたお手製のお弁当でメンバー全員毒状態だったとか、そもそもエルが浮かれすぎていたんだとか、諸説ありますが。いいんです、次また決勝めざして頑張るから!!
廊下の仇を取るんじゃなかったのかと散々突っ込まれましたが。うっさい!(どーん)
でもごめんなさい。勝ちたかったのは私も馬鹿娘も同じだったんですよー!!
神秘属性の相手に競り負けるとか、特化型意味ねーっすよ……。と、微妙に引きずって背後ごとローテンションなので、ちょっと長めに書いてみました。書いてみたら、やっぱり浮かれすぎて負けたんだという気がしてきました。はっは。

【以下修正あり】
…星司君とのやりとりとか楽しかった没案ですが、星司君がリンク日記書いてくれたのとで…こっそりと入れ替えました、えへ。
やっぱりエル子が先に帰るとかありえねーだろと思わなくもないですが。

…なんとなく、星司君の電話番号はリダイヤルの一番上にありそうな気がしてます。
どうにも苦手な一人暮らし、寂しくなると電話する相手は多分星司君なんですよね。でも、なんか迷惑そうにしながらも適当に付き合ってくれていそうな気がします(笑)
ダンテ君や琥先輩をGTに誘う時は、部活や仕事に気を使ってきっとメールで誘っていると思います。若しくは、会ったときに約束。ダンテ君はキャンパス同じですし、ねー。でも星司君には気を使わない……違うな。何故かしら、エル子は大学のカリキュラムとかバイトとか日常のタイムテーブルを全て把握していると確信をもって言えます。……おかしい。

キャンパスといえば、仁奈森キャンパスはダンテ君も空君もたつみちゃんも輝君も壱帆ちゃんもいるんですよね。クラスメイトも仲良しですが、生贄お弁当仲間が揃ってるのが素敵すぎます。運命万歳☆
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