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戦争の痕【3】

2008.06.24 *Tue
 
 目指す長身の影を見つけ、その隣にぽすっと腰を下ろした。

「琥先輩、隣いい?」

「……いいもなにも、もう座ってるじゃないっすか…」

 眇めた目で一瞥した男は視線を逸らし、距離を取るように座り直した。

 その数センチを律儀に詰めて、エルはにこりと笑みを浮かべる。

「怪我、なくてよかった♪」

「あれくらいで怪我するほどナマってねーっすから……」

「前衛って怖いんだね。ゴーストタウンやプールとは違うや…ちょっとだけ、死ぬかと思った」

「……………」

 肩を竦めたエルに視線も投げず、琥吉は沈黙だけを返す。

「ちょっとだけ、話しようよ…ね、先輩?」

「…話すことなんてないっすよ」

 烈火の如き気性の男の、静かな口調。

 伏せられたまま、開かれない眼。

 拒絶するようにしっかりと組まれた腕。

 産んだ溝を改めて垣間見て、毀れそうになったため息を飲み込んだ。

 ──傷つけたのは、自分だから。

「ボクにはあるのっ!沢山、たくさんっ」

「……………」

「……先輩」

「……………」

「……聞いて?」

「……………」

「……少しでもいいから…」

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

 沈黙が帳のように下りてくる。

 異変に気付いたのは、十数分も経ったころ。

「先輩、寝ちゃった……?」

 そっと触れる手に、反応はない。

「むう……いいよ、起きるまで待ってるから。おやすみ」

 誰に告げるでもなく宣言すると、脱いだ上着を琥吉に掛け

 しゃんと背筋を正して座りなおした。

 けれど、劣勢の局面で前衛に立った緊張は思いもかけぬ疲労を蓄積していた。

 すぐに意識が揺らぎ始めた自分を戒めるかのように、何度も何度も首を振って

 その度に浮上する意識は、徐々に深い場所へと沈んでいく。

「……も、だめ…」

 沈黙が寝息に変わるまで、さほどの時間は掛からなかった。

 睡魔と重力に負けた身体が崩れ落ち、琥吉に凭れる。

 伝わる体温が心地良く、更に深い眠りへと誘われて、

 いつしか、現との境も曖昧な甘やかなる夢へと堕ちていった──……
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